光と影と子どもたち


  犬飼聖二

 光と影の世界をそっと歩き始めて、もう15年が過ぎようとしています。

 どきどきしながら初めて仲間といっしょに手作りの影絵劇を演じたのが、つい昨日のように思われます。この初演で、テレビなどの強い刺激に慣らされているはずの子供達の、心を傾けて見てくれる静かな熱気をスクリーンごしに感じ、素朴な影絵に想像する楽しさを十分に味わっているのを知ったことが、私の光と影の世界への第一歩になりました。

 それ以来、より良質な影絵の劇創り・手の影あそび・即興劇・歌あそぴといろいろ試しました。大人の演じる影絵を見て想像する楽しさを味わうのと同時に、子供自身が主人公になって想像し創造する活勅へと広がっていったのも、これらの実践を土台にしてでした。

 保育の場での劇創りや表現あそびでは、力強い主張や表現を通して、それぞれの子供に固有の創造性が発揮されるのに感動し、また屋外でのあそぴでは、私達の身近にある影たちの豊かな表情に気づき、子供と共に心の広がる思いもしました。

 こうした体験から、影あそびの輪郭が少しずつ見えてきたように思います。それは、影と遊び影を見つめることで、光と影をつくる何か(時には物や人形であり、時には子供自身である)に気づくことから始まり、子供が自身を取り囲む世界の豊かさ、そして生きる喜びを深く感じることへの、ステップのひとつとして影あそびがあるということでした。

 想像すること、創造することから生まれるみずみすしい感動が子供の世界から奪われようとしている現代、無限の広がりをもつ光と影の世界で、けれんみなくそして優しく生きていく子供達の心を大切に、さらに楽しい影あそびを実践していきたいと思います。

 

  「影あそびがいっぱい」にもどる